情報処理の試験 / いわゆるIT関係 / 具体的にはソフトウェア開発技術者試験

ソフトウェア職人の朝は早い。
 ソフトウェアの開発に欠かすことのできない電子頭脳は熱さを嫌う。無理からぬことだ。生身の人間が生涯掛けてもこなすことのできない演算を、それはものの数瞬で片付ける。ブドウ糖が燃え上がり熱を帯びる。南中の日差しは致命的だ。故に、職人の仕事も自然、明朝から始まり、日中に朝のエラー処理を検討、日没後にその処理に当たるというものになる。エラーが片付くまで職人の一日は終わらない。過酷な、一握りの資格を持つ者のみに許され、耐え得る仕事なのだ。


日も暮れようかという頃、山向こうにひとすじ昇る黒煙が見えた。また、同業者の電子頭脳が焼け落ちたのだ。納期に追われ、熟練の職人も解っていながら日中の作業に手をつけてしまう。甘くない世界だった。
「またひとり逝ったか」
 呟いた彼の視線の先、煙はまだ留まるところを知らず天に昇る。ふたつの魂を星の世界へ誘うように。


Oct. 21. Sun. 2007