はしだのりひことシューベルト

バリー・リンドン
スタンリー・キューブリック 監督 | 映画 1975年

Apr. 25. Sun. 2010 鑑賞

IT WAS IN THE REIGN OF GEORGE III
THAT THE AFORESAID PERSONAGES LIVED AND QUARRELLED;
GOOD OR BAD, HANDSOME OR UGLY, RICH OR POOR
THEY ARE ALL EQUAL NOW

キューブリックの映画が好きだ” とはなかなか言いづらかった。何故なら、実は「2001: a space odyssey」と「時計仕掛けのオレンジ」の二本しか観ていないから。
 この哀れな語り部は、やっと三本目に手を出すことにしたってわけ。ライティライト?

18 世紀の欧州を舞台に、アイルランドの平民の若者が自身の才覚と幸運を頼りに立回る姿を描いた物語。
 キューブリックの作った “18 世紀の映像” と音楽の調和が美しく、三時間超の長尺を飽かずに眺めていることができる。リアリティを重視して 18 世紀当時の音楽を BGM に揃えた中、敢えて用いられた 19 世紀のシューベルト作、「ピアノ三重奏曲 第二番 変ホ長調」。これが前半と後半それぞれのラストとという、印象的な使われ方をしており、脳に善い汁が溢れます。
 物語の方は非常に淡々と進行し、随所に入るナレーションは多くの場面で映像を先回りしているので、次に何が起こるか WAK WAK するということはない。しかし、それでいい。
 自身の器量によって栄達し、同じく器量によって滅びていくバリーの姿に教訓めいたものを感じることもできるが、そういうことよりも、ラストに示されるエピローグに殆どすべてが書いてあり、尚かつ、それは三時間かけてバリー・リンドンの人生を追いかけていればこそ、脳に汁を噴出させる仕掛けになっているからだ。